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雑草のように

さて、廃墟のようなここ、「今日も足が臭い」もいよいよネタがなくなってきました。
なので村おこし的な発想で、新ジャンルを立ち上げてみました。
気が触れたわけではございません。
べつの所で書いているポエムの詳細記事とでも言いましょうか。
つか、ポエムて。
ちなみにカテゴリ名の「サーチライト庸子」には、何の意味もありません。



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誰にも何も言われず、そこにいることを気付かれないくらいしぜんな人になりたい。
駅のホームでそんなことを考えながら、電車を待っていた。
駅は土曜日だということもあって、沢山の人でごった返していて
私はもうそれだけで吐き気がする。
これだけ人がいれば、誰かが私のことを見ていてもおかしくはないだろうと思うからだ。
自意識過剰?そうかもしれない。
でもそういうことってみんな多からず感じているのだと思う。
誰かも分からない人に見られるなんて、気味が悪いわ。
私の後に並んでいるこの青年だって、何者かわかったものじゃない。
私の後ろ姿を舐めるように見ているかもしれない。
そう考えると急に恐くなって、私は後を振り返ると

「あなた、誰?」

と青年に言った。
青年は不思議そうな目で私のことを見つめ、おどおどしてから

「は?……誰って言われても……」

と困惑するばかりだ。
私は、少しでもその人のことを知ればお互い恐怖も薄れるだろうと思って
声をかけたのに、誰って言われてもですって。
私は幻滅して振り返るのを止め、溜息をついた。
背中に感じる青年の視線。
ほら、やっぱり見ているんだわ。
私のことを舐めるようにずっと。
いやらしい。
あぁ、こんな青臭い男に見られるくらいなら、道ばたの石ころになりたい。
誰も気に留めない、道ばたの石ころとか、雑草とかに。
そうして雑草のような彼氏ができて、
雑草のような恋をして
雑草のような顔色で、雑草のように生きるの。
そんなことを考えている間にも、青年の視線は私の後ろ姿に突き刺さっている。
どうしようもなく腹が立ってきて

「私は雑草になりたいのよ!」

と叫んで男の顔を平手で殴ったの。
青年はキョトンとした顔で叩かれた左頬を押さえている。

「雑草よ。あなたにわかる?」

そう言ってもう一度男の顔を殴る
そしたら今度は、青年はおろか周りの人混みも私を見て、ざわざわして、
手の届く範囲の人人人を順番に殴ってまわっっていると、
私の右手は汚らしいオヤジに掴まれて動けなくなった。
どうしてなのかわからないのだけどその時、私の頭の中には雑草の歌(作詞・作曲:私)
が流れてきて、それをラララと口ずさんでいたらいよいよ駅員までもがやって来て
私の腕を掴んで変な個室に連れて行かれたの。

私は座り心地の悪いパイプ椅子に着席させられて
何か色々言われたり聞かれたりしたのだけど、
私の頭の中には雑草の歌が流れていてそれどころじゃなかったし、
私はそもそも雑草だから喋ることも聞くこともできない。
私は雑草。
何も喋らないことを誓ってだんまり。
何か聞かれたら

「私は雑草」

とだけ答えて、雑草の歌を口ずさんでいたらだんだん気分がドロドロになってきて
水の中にいてるみたいにふわふわとして気持ちがいい。
もういっそ、お魚の卵になりたい。
by gennons | 2005-03-01 07:14 | サーチライト庸子
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