突然ですが、鰹さんの記事にTBです。理由はとくにありません。気まぐれですよ。ええ。
------------------------------------------------------------------------------------------------ 「俺は、お前を幸せにできない。抱きしめてやる資格さえもないんだ」 彼はあたしを優しく抱き寄せてからそう言うと、短いキスをして保温ケースの扉を開けた。 彼は私たちが好きだった。尋常じゃないくらい、アイシテアイシテ止まない気持ちを持ちながら、 私たちは決して結ばれない運命にある。 それは私たちが出会った時から、すでに決まっているしきたりのようなものだ。 私にも、彼にも、他の誰にもその鎖を断ち切ることはできない。 12月、外は寒いのだろうか。出勤してくる彼の顔が赤く凍えているのが悲しい。 私はこんなにも熱い思いと身体を持て余しているというのに、彼を暖めてあげることができない。 保温ケースのこの場所で、彼のそばで、一枚のガラスを隔てた私と彼は、会話を交わすことさえなく、 ただ私が売られていくのをお互いに待つことしかできない。 こんなに悲しいことが、他にあるだろうか。こんなに己の人生を呪うことがあるだろうか。 今日も私は売れ残り、人気の少ない店内で彼は言う。 「俺はお前を売るのが仕事。お前は誰かに買ってもらうのが仕事。 わかってる。そんなこと、毎日毎日確認しなくちゃわからない訳でもない。 でもどうしてだろう、それを口に出さないと、心が握りつぶされてしまいそうだ」 彼の右目から、一筋の涙が零れた。 「俺は、お前を幸せにできない。抱きしめてやる資格さえもないんだ」 何度も何度も聞いたはずの台詞。 何度聞いても、胸の苦しみが変わることなんてない。 「でも俺は、お前を立派に売ってみせる。俺なんかより、ずっとお前を愛してくれるひとに」 保温ケースの中には、私以外にもたくさんの同志が眠っている。 彼が私を愛してくれるのは、私が売れ残ったからなのだという。 そんな歪んだ愛だと分かっていても、私は彼を愛していた。 昨年はたくさん売れたのだと彼は言っていた。 毎日毎日一つずつ、買っていくお客さんがいたらしい。 私もそのひとにもらわれる予定だったのだけど、すんでのところで冬が開けてしまったのだ。 今年こそ、私はその人と店を出るだろう。 寒い朝。今年一番の、 とてもとても、寒い朝が来たら、私は彼のもとを離れる。 それは明日なのか、明後日なのか、来週なのかはわからない。 だから私たちは、今の時間を宝石のように大切に、 幸せなのだと言い聞かせてはガラスをとおして見つめあっている。 数日後…… 「いや、それ去年のやつでしょ? となりので。」
by gennons
| 2006-10-17 23:38
| トラバ
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クラミジア尿道炎なんかの検査に用いられるような極細綿棒を大量購入しました。
キーボードの掃除とかライターの発火口に入った埃取りなんかに使っています。 極細綿棒の使い方についてもっと詳しく知りたい方はメールでも下さい シモキタが好きな人も 嫌いな人も。↓ 最新のトラックバック
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