カテゴリ:サーチライト庸子( 2 )

アフリカ

景気づけに、明るい話題の記事を上げます。
サーチライト庸子、七歳。
乙女力満開で猛ダッシュ。
苦情一切お断り。


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ららら林檎の皮むき機 持ち手がちいさくてららら

今日も私は働くの。
毎日毎日、蟻さんのように働いて得るものは一体何になるのかしら。
両手一杯にコピーする書類を持って、階段を上る。
これが綺麗なお花だったなら、どんなに幸せでしょう。
でもこれは書類。
どう足掻いても花束にはならない。
えぃっ!と魔法をかけたら、お花に変わるかしら

「えぃっ!」「んなめぅ!」「えぃっ!」

会社の階段で魔法をかけていると、足元に転がるマフィンが目に付いた。
会社の階段で見るマフィンは、どこか日常と離れた感じがして、
私はしばらくその異空間から来たマフィンに見とれて立ちつくしていた。

「マフィンよマフィン、あなたはどうしてここに転がっているの?」

そう尋ねても、マフィンは何も喋らない。
わかってる。わかっているわ。マフィンが喋らないことくらい私にも。
でも喋らないなんて誰が決めたのかしら。
私は今さっきまでここで、魔法をかけていたのよ。
マフィンが喋ったら、この書類だって花束に変わるかもしれないじゃない。
そんな希望を少しくらい持ったっていいじゃない
あなたにどうしてそれを奪う権利があるの?
あなたはいつもそう。私が望むことを、理解してくれようともしない。
マフィンが喋ったら、どうするの?
どうしてくれるの?
そう……そうね。食べるかもしれないわ。
恐怖でマフィンを食べてしまうかもしれない。

ということを考えていると、彼の笑顔が頭に浮かんだ。
マンガやなんかで満月が好きな人の顔にぼやぁっと変わるビジュアルが
私の頭に広がってそして、心を全て、覆い尽くしてしまう。
こうなったら最後、私は仕事どころじゃなくなるの。

「このマフィン……彼に食べてもらいたい……」

この感情は抑えろって言われてももう止まらない。
走り出したら止まらないゼンマイ仕掛けのくるまやさん。
思い立ったら大吉日で、私はそマフィンに手を伸ばす。
そしたら私ったら、手だけを伸ばせば済む話なのに
同時に足まで出しちゃって、
うっかり踏んづけたマフィンはグシャリと音も立てずにぺしゃんこになって、
足を上げてみたらもう粉々で、靴の跡がとても寂しく見えて仕方がない
私はもう奥歯のつま先あたりまで、涙が込み上げていて

「泣きたいのはこっちの方だわ」

と叫んでみたら、誰もいない階段に
「だわぁ……だわぁ……わぁ……ぁ……」と声が響くだけで
だれも何も言わないことがつまらないから泣くのをやめて、粉々になったマフィンを拾い集めたの。
ちょっと形は悪いけど、味は保証する
あなたの為に、一生懸命拾い集めたから。だから。

両手に粉々のマフィンを持っていて、とてもじゃないけど書類なんて持てない。
私はマフィンのかけらをこぼさないようにそぉっと家に持ち帰り、
このままじゃなんだから、ラッピングして、彼のもとへと全力で走るの。
駅までの道を走りながら、
魔法で書類がお花に変わっても、たいして幸せでもないことに気付いたけど
切符を買って電車に乗り込んだときには、
そんなこと、もう思い出せないくらい幸せな気持ちでいっぱいだった。
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by gennons | 2005-03-15 19:51 | サーチライト庸子

雑草のように

さて、廃墟のようなここ、「今日も足が臭い」もいよいよネタがなくなってきました。
なので村おこし的な発想で、新ジャンルを立ち上げてみました。
気が触れたわけではございません。
べつの所で書いているポエムの詳細記事とでも言いましょうか。
つか、ポエムて。
ちなみにカテゴリ名の「サーチライト庸子」には、何の意味もありません。



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誰にも何も言われず、そこにいることを気付かれないくらいしぜんな人になりたい。
駅のホームでそんなことを考えながら、電車を待っていた。
駅は土曜日だということもあって、沢山の人でごった返していて
私はもうそれだけで吐き気がする。
これだけ人がいれば、誰かが私のことを見ていてもおかしくはないだろうと思うからだ。
自意識過剰?そうかもしれない。
でもそういうことってみんな多からず感じているのだと思う。
誰かも分からない人に見られるなんて、気味が悪いわ。
私の後に並んでいるこの青年だって、何者かわかったものじゃない。
私の後ろ姿を舐めるように見ているかもしれない。
そう考えると急に恐くなって、私は後を振り返ると

「あなた、誰?」

と青年に言った。
青年は不思議そうな目で私のことを見つめ、おどおどしてから

「は?……誰って言われても……」

と困惑するばかりだ。
私は、少しでもその人のことを知ればお互い恐怖も薄れるだろうと思って
声をかけたのに、誰って言われてもですって。
私は幻滅して振り返るのを止め、溜息をついた。
背中に感じる青年の視線。
ほら、やっぱり見ているんだわ。
私のことを舐めるようにずっと。
いやらしい。
あぁ、こんな青臭い男に見られるくらいなら、道ばたの石ころになりたい。
誰も気に留めない、道ばたの石ころとか、雑草とかに。
そうして雑草のような彼氏ができて、
雑草のような恋をして
雑草のような顔色で、雑草のように生きるの。
そんなことを考えている間にも、青年の視線は私の後ろ姿に突き刺さっている。
どうしようもなく腹が立ってきて

「私は雑草になりたいのよ!」

と叫んで男の顔を平手で殴ったの。
青年はキョトンとした顔で叩かれた左頬を押さえている。

「雑草よ。あなたにわかる?」

そう言ってもう一度男の顔を殴る
そしたら今度は、青年はおろか周りの人混みも私を見て、ざわざわして、
手の届く範囲の人人人を順番に殴ってまわっっていると、
私の右手は汚らしいオヤジに掴まれて動けなくなった。
どうしてなのかわからないのだけどその時、私の頭の中には雑草の歌(作詞・作曲:私)
が流れてきて、それをラララと口ずさんでいたらいよいよ駅員までもがやって来て
私の腕を掴んで変な個室に連れて行かれたの。

私は座り心地の悪いパイプ椅子に着席させられて
何か色々言われたり聞かれたりしたのだけど、
私の頭の中には雑草の歌が流れていてそれどころじゃなかったし、
私はそもそも雑草だから喋ることも聞くこともできない。
私は雑草。
何も喋らないことを誓ってだんまり。
何か聞かれたら

「私は雑草」

とだけ答えて、雑草の歌を口ずさんでいたらだんだん気分がドロドロになってきて
水の中にいてるみたいにふわふわとして気持ちがいい。
もういっそ、お魚の卵になりたい。
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by gennons | 2005-03-01 07:14 | サーチライト庸子