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ワイフ

あ、どうも。
パスワードを思い出した足草です。
クレマムさんの福福にお邪魔して赤いマグカップを購入したのですが
ケミチョウとお揃いだということを聞いて
思わずカップをマヨネーズ入れにしてしまうところでした。
意味不明ですか。そうですか。
と、このように、自分が変態だという確信のある方のみ下へお進み下さい。




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「お前に話さないといかんことがある」

父さんは煙草を灰皿でトントンたたくと、まっすぐな眼で僕を見た。
これから父さんが何を言おうとしているのか
それが僕にとってどれだけ重要なことなのかを僕は知っている。
今までの幸せな生活が一転することだって。
僕は言われてもいないのに正座した。
父さんの隣に腰掛ける母さんは、いつものようにうなだれて目線を絨毯に落としたまま動かないでいた。
僕は今までの母さんを、全て否定されるようなことなど聞きたくはなかった。

「お前ももう解っているだろうけど」

僕は助けを求めるかのように母さんを見た。
でも母さんは、栗色の眼で斜め右下を見つめているだけで
僕と眼が合うことなんて一度もないままだった。


母さんはいつも斜め右下を見ている。
感情は、ない。たぶん。
心はあるのかもしれない。
動くこともなければ話すことも、僕を叱ったり料理を作ったり、
そんなことはまるで“しない”母さんだ。
母さんは日がな一日居間のソファに座り、
父さんが帰ってくるまでそこでジッとしているだけだった。
母さんは父さんが帰ってくると、父さんにお姫さまだっこをされて寝室に向かう。
僕は母さんに「おやすみ」を言って自室で聞き耳を立てる。
部屋を真っ暗にして目を閉じると、寝室からは父さんの荒い息遣いと、
膝がシーツに擦れる音だけが事務的なリズムを刻みながら壁際に響く。
昼間、母さんに見る栗色の瞳を思い出しながら、
僕は布団にくるまって、毎晩身体を熱くさせているのだ。

母さんはとても綺麗だった。
他のどの友達の母さんよりも、うんとうんと綺麗だ。
髪と眼は栗色で、色も白い。
そしていつまでも老いることはなく、永遠に美しいままなのである。

中学に入ってすぐの頃だったろうか、
学校から帰宅した僕は、いつものようにソファで佇む母さんに向かって声をかけた。

「僕のこと、好き?」

母さんは黙っていて、微動だにしない。
そんなこと分かっているのだけど、僕は続けた。

「好きな娘が、母さんにそっくりなんだ」

好きな娘なんていない。
何のための言い訳なのかは自分でもよく解らなかった。
僕が好きなのは母さんだけなのに、
そんなことをいう自分が許せなくもなった。
そして僕は母さんの隣に腰掛けて、
斜め右下からゆっくりと顔を近付け、唇を重ねた。
母さんの唇は口紅と、僅かなビーチボールの匂いがした。
僕の身体は小刻みに震えはじめて、どうにも止まらない。
震えが誰かに気付かれやしないかといらぬ心配を打ち消すために
右手で母さんの胸を掴む。
窓の夕日が空と母さんの肌を朱色に照らし、
まるで母さんに血が流れているのではないかと思うほどに綺麗なオレンジ色をしていて
音がしないのを分かっていながら
それでも胸に耳をあててみた。
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by gennons | 2005-06-08 17:02 | 妄想