シモキタなんてラララー

鰹さんのところで見ました。下北沢11648 ベッドサイドドラマ 篠田算さんにTBです。



またきみはその店の話ばかりする 下北沢は変わってしまう (足草)

きみがみた景色を僕は知らぬまま 下北沢は変わってしまう (足草)



下北沢が好きというわけではないです。むしろちょっと苦手というかなんというか、嫌いです。えー。
好きとか嫌いとか言えるほど行ったことがないのですが。
僕の頭の中では若いのかおっさんなのかよく分からない人たちが徘徊している街というイメージが強いかなあ。あ、あとバンドとか?
食わず嫌いですね。そうですね。
あー、えと、音楽やってる人が羨ましいとか妬ましいとかいろいろな感情があるので、
そういう人たちのカオスが混沌としている街に苦手意識を感じているのだと思います。
下北沢的なものがなくなってしまうということがどういうことなのか僕は知らないです。

大切な人の思い出があり、嫌いな人のいる場所でもある下北沢。
「下北沢的」という感覚がなくなってしまったら、嫌うことすらできないではないですか。なんて。

しーん









・・・・・・・・・・テンプレ・・・・・・・・・・かなっ?

良かったら、あなたのブログでも

・下北沢は変わってしまうを付け句として前半の5・7・5を考えてください。
・記事のどこかに http://www.stsk.net/ へのリンクをはってください。
・出来れば、下北沢に対する思いを綴ってください。


・・・・・・・・・・テンプレ・・・・・・・・・・かなっ?
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# by gennons | 2005-07-19 19:42 | トラバ

開封

休日の過ごし方を考えていたら、夕方になってしまった。
こんな事で一日潰れるのなら、もう少し睡眠をとっておくべきだったのではないか。
しかし今更後悔しても何も始まらないし何も産まれない。
後悔という無意味な時間とともに夜を待つことなど、もっとも馬鹿らしいことだと思う。
仕方なく俺は食料や日用品の買い出しに外へ出た。
初夏の夕暮れと生暖かい風が奇妙な体感温度を作り、俺は空を見上げながらスーパーまでの道のりをふらふらと歩く。


中略


鯖の缶詰に手を伸ばしたところで俺の手が停まる。
缶詰の配列が気になったのか、どういう原因で手が停まったのかはまだわからない。
順を追って缶詰の並びを注意深く端のほうから確認してゆく。

鯖、焼き鳥、蛤、コンビーフ、彼女、コーン、ホワイトアスパ……

彼女?

彼女の缶詰を見つめながら、世の中も便利になったものだと独り頷いてやはりそれも籠の中に放り込み、
そのあとビールとトマトと袋ラーメンと洗剤を購入し、レシートをポケットに突っ込んでスーパーを出る。
ぼんやり歩きながら、袋から彼女という缶詰を出してまたぼんやりとそれを眺めつつ夕暮れの町を歩いた。
アパートの廊下で鍵を出すのに手こずっていると横山さんがどこかへ出掛けるのか、ドアから下半身を覗かせて部屋の電気を消している。
横山さんは油っこい顔で俺に気が付いた素振りを見せ、こんにちはと言った。
そして俺の右手に彼女の缶詰を確認すると頬を緩ませながら
「ほう。柴田さんもとうとう彼女ができましたか。うらやましいですなぁ」
なんて言うもんだから俺は顔が熱くなって「いや友だちに頼まれまして」と嘘。
「まあどっちにしろ、彼女は大切に。では」と俺に少し会釈して駐輪所へ向う。

鍋に水を入れ、コンロを捻る。
ラーメンでも喰おうかと思ったのだが、少し考えてコンロの火を止めた。
先に彼女を開封し、作ってもらえば良いのだと気が付いたのでからだ。


注意(赤字で大きく書かれている)
・缶詰を空ける際には缶切りで刃の入る位置をコンコンと二回、軽く叩いてから刃を入れて下さい。
・彼女は、食用ではありません。
・彼女によって、プライベートな感情の違いがありますが、品質には特に問題ありません。
・彼女の嫌がる行為、傷つける行為等は法律で禁止されています。
・彼女によってプライベートに触れられるのを嫌がることがあります。
・彼女の違法投棄はやめましょう。


空ける前に缶詰を叩くのは、誤って中の彼女を傷つけないためだろう。
焼き鳥の缶詰とほぼ変わらない大きさの缶詰に、これからの俺の彼女が入っているところを想像すると、
どうにも興奮がおさまらなかった。
タイプじゃないのが出てきたらどうするのだろう。
しかしそのときはそのときだ。何らかの方法があるのだろう。

台所から缶切りを持ってきて、缶詰の端っこをコンコン、と小さく叩く。
缶詰に耳を近づけてみたが、イマイチ反応がわからない。
不安だったのでもう一度コンコンと缶の端を叩いてから静かに刃を入れる。
きりきりと缶切りを進めて半分くらいまで缶が切れたあたりで彼女の脚が見えてきた。
ゆっくりと缶切りを進めると、彼女の脚は缶切りの刃を少し避けるように身体をよじらせて
半分ほど開いた缶の隙間からひょっこりと顔を覗かせた。

「切れ目で怪我をしたくないから、全部開けてね」

意外にも彼女の声は低かった。
タバコか酒で潰れたようなしゃがれ声。
嫌いではない。ただそのせいで早速彼女の過去が気になりつつある。
彼女が、美しかったことも関係しているのかもしれない。
ゆっくりと、慎重に彼女を傷つけないように缶切りを進める。
缶の蓋が全て開いたとき、俺は目を疑った。

中には手のひらにすっぽりと収まってしまうくらい小さな裸の彼女。
そしてもう一人、同じくらいの大きさの、男。

俺はもう一度缶詰の注意書きを読んでみたが、
男が一緒に入っているなんて一言も書いていない。
仕方なく俺は彼女をややきつい目で睨んで、これ、誰?と聞いた。
彼女は小さく溜息をついて(身体も小さいので溜息も小さい)やれやれといった調子で顔を上げて言った。

「過去よ」





つ……続くのか……!?
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# by gennons | 2005-07-12 04:11 | 妄想

ワイフ

あ、どうも。
パスワードを思い出した足草です。
クレマムさんの福福にお邪魔して赤いマグカップを購入したのですが
ケミチョウとお揃いだということを聞いて
思わずカップをマヨネーズ入れにしてしまうところでした。
意味不明ですか。そうですか。
と、このように、自分が変態だという確信のある方のみ下へお進み下さい。




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「お前に話さないといかんことがある」

父さんは煙草を灰皿でトントンたたくと、まっすぐな眼で僕を見た。
これから父さんが何を言おうとしているのか
それが僕にとってどれだけ重要なことなのかを僕は知っている。
今までの幸せな生活が一転することだって。
僕は言われてもいないのに正座した。
父さんの隣に腰掛ける母さんは、いつものようにうなだれて目線を絨毯に落としたまま動かないでいた。
僕は今までの母さんを、全て否定されるようなことなど聞きたくはなかった。

「お前ももう解っているだろうけど」

僕は助けを求めるかのように母さんを見た。
でも母さんは、栗色の眼で斜め右下を見つめているだけで
僕と眼が合うことなんて一度もないままだった。


母さんはいつも斜め右下を見ている。
感情は、ない。たぶん。
心はあるのかもしれない。
動くこともなければ話すことも、僕を叱ったり料理を作ったり、
そんなことはまるで“しない”母さんだ。
母さんは日がな一日居間のソファに座り、
父さんが帰ってくるまでそこでジッとしているだけだった。
母さんは父さんが帰ってくると、父さんにお姫さまだっこをされて寝室に向かう。
僕は母さんに「おやすみ」を言って自室で聞き耳を立てる。
部屋を真っ暗にして目を閉じると、寝室からは父さんの荒い息遣いと、
膝がシーツに擦れる音だけが事務的なリズムを刻みながら壁際に響く。
昼間、母さんに見る栗色の瞳を思い出しながら、
僕は布団にくるまって、毎晩身体を熱くさせているのだ。

母さんはとても綺麗だった。
他のどの友達の母さんよりも、うんとうんと綺麗だ。
髪と眼は栗色で、色も白い。
そしていつまでも老いることはなく、永遠に美しいままなのである。

中学に入ってすぐの頃だったろうか、
学校から帰宅した僕は、いつものようにソファで佇む母さんに向かって声をかけた。

「僕のこと、好き?」

母さんは黙っていて、微動だにしない。
そんなこと分かっているのだけど、僕は続けた。

「好きな娘が、母さんにそっくりなんだ」

好きな娘なんていない。
何のための言い訳なのかは自分でもよく解らなかった。
僕が好きなのは母さんだけなのに、
そんなことをいう自分が許せなくもなった。
そして僕は母さんの隣に腰掛けて、
斜め右下からゆっくりと顔を近付け、唇を重ねた。
母さんの唇は口紅と、僅かなビーチボールの匂いがした。
僕の身体は小刻みに震えはじめて、どうにも止まらない。
震えが誰かに気付かれやしないかといらぬ心配を打ち消すために
右手で母さんの胸を掴む。
窓の夕日が空と母さんの肌を朱色に照らし、
まるで母さんに血が流れているのではないかと思うほどに綺麗なオレンジ色をしていて
音がしないのを分かっていながら
それでも胸に耳をあててみた。
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# by gennons | 2005-06-08 17:02 | 妄想

エッチボール!

気まぐれに一つ書いてみました。
コレを残し、また休むと思います。
ゆっくり、あせらず。



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「これ、いいから握ってみろよ」

化学実験室の片隅で香川が僕に渡したものは、黄色い小さなスポンジのボールだった。
手のひらにスッポリとおさまったボールを僕はフニフニと握ってみたのだけど
何のことはない、ただのボールである。
香川が何を思って授業中にこんなものを僕に握らせたのかは分からないけれど、
ボールを握る僕の顔を覗き込む香川の顔はとても嬉しそうだった。
コイツの考えていることは、いつも訳がわからない。

「で、何?」

僕は香川を小馬鹿にしたような口調で言った。
香川はビックリしたように目を丸くさせて、なんで?と言う。
そのなんで?が僕には理解できなくて、もう一度香川に、だから何?と言った。

「コレ握ると、エッチな気分にならない?」

溜息が出た。
と同時に、こんなスポンジのボールで発情できる香川を少し偉大にも思った。
「ならねぇよ」そう言うと香川は
「おかしいなぁ」なんて言いながら僕からボールを取り戻し、フニフニと揉み始めた。
香川の表情がうっとりとしてきて僕に、ほらっほらっ、と言いながら股間を指さした。
香川の股間が風船を膨らますように少しずつ大きくなって、
制服のズボンに奥行きを出した。

「どういう思考回路してるんだよ」

小馬鹿にしたように僕が言うと香川は

「なんか、握り心地がエッチなんだよなぁ」

なんて言いながらフニフニとボールを握る。
僕は馬鹿馬鹿しくなって、どうかしてるよお前、と呟いて硫酸ナトリウムに重曹を入れた。
ビーカーの中の液体がブクブクと泡立ち始めて、
僕はそっちの方がエロティックなのではないかと思い香川を見たのだけど
香川は飽きもせずフニフニとボールを握るばかりで授業を全く聞いていなかった。
しつこくボールをフニフニする香川が気にならない訳ではない。
僕はもう一度香川に向き直り「どこがそんなにエッチなんだよ」と聞いた。
香川はうっとりとした表情で「え?何か言った?」ととぼける始末。
僕は「何でもねぇよ」と言うと机に向き直り、ビーカーを眺めた。
ぶくぶくと泡立つビーカーの中の液体を見ながら、
僕は机の下で香川のやっているように右手をフニフニ動かしてみた。
少しエッチな気分になったような気がしたのだけど、
それはここが化学実験室だからなのだと気付く。
コイツの考えていることは、いつも訳がわからない。
僕は香川の乱れきった表情を一瞥して硫酸にまた少し、重曹を加えた。
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# by gennons | 2005-04-21 22:25 | 妄想

ナカメグロっていうのがどうやらオシャレらしい。

「ねぇ、ナカメグロって知ってる?」

「何?それ。魚?」

「いやさぁ、俺もよく分からないんだけどさ」

「それがどうかした?」

「すっごいオシャレらしいよ」

「ナカメグロ?」

「うん。ナカメグロ」

「それはちょっと食べてみたいな」

「食べるの?」

「食べ物じゃないの?」

「いや、そうかもしれないけど、俺はたぶん違うと思う」

「そうかなぁ」

「だいたいさ、オシャレな食べ物って何だよ」

「ほら、グラタンとか、スパゲティのことパスタとか言っちゃったり」

「グラタンってオシャレなの?」

「オシャレじゃない?」

「グラタンかぁ……じゃあニョッキとかもオシャレ?」

「ニョッキ?んー、惜しいな。ぎりぎりアウト」

「じゃあオシャレな食べ物の基準って何だよ」

「まぁ、横文字だよな」

「とりあえずね」

「で、なあんかイタリア臭いやつかな」

「イタリア臭いのはオシャレなの?」

「うん。とりあえずね」

「じゃあニョッキもオシャレじゃない?」

「ニョッキってイタリアなの?」

「よくわかんないけど、アレもパスタでしょ?」

「そうか……あ、で、ナカメグロって何?」

「わかんない」

「どのアタリがオシャレなのかな」

「とにかくすっごいオシャレだと聞いたけどね」

「オシャレなものって、いつも曖昧だもんね」

「あ、思い出した。服とか関係してるかも」

「それ全然思い出してないよね」

「服関係でオシャレらしいよ」

「じゃあ服屋さんに聞けばいいのかな」

「そうかもね。ナカメグロ下さいって?」

「ナカメグロって服の名前なのかもね」

「服に名前って付いてるもんなの?」

「ほら、そこはオシャレだからさ」

「それ、オシャレの使い方間違ってない?」

「そう?オシャレな使い方したと思うけど」

「オシャレってさ、どういう基準なのかな」

「オシャレなものをオシャレだと言えることじゃない?」

「それってオシャレなの?」

「違うの?」

「オシャレってさ、こだわりとかそういう問題じゃないの?」

「精神面の話?」

「そう。曖昧な話」

「じゃあオタクもオシャレだよな」

「うん。たぶん究極のオシャレだと思うよ」

「ナカメグロって案外人の名前かもよ」

「オシャレな人の?」

「そう。オシャレな人の」

「危なかったね。服屋で人を注文するところだったよ」

「人を買うところだったね」

「それって、なんだかいやらしいね」

「ナカメグロもいやらしいのかな」

「どういうこと?」

「ほら、最近はオシャレヌードとか流行ってるでしょ?」

「流行ってるの?」

「うん。ヌードがオシャレなの」

「それってナルシストと紙一重だよね」

「そうじゃなくて、写真がオシャレらしいよ」

「カメラマン?」

「カメラマンなのかな?」

「カメラマンがオシャレなのは、その人の本質だよね」

「そうだね。決して職業がオシャレって訳じゃないよね」

「じゃあ何がオシャレなの?オシャレヌードは」

「写真……?かな?」

「写真か。写真にオシャレですねっって言っても、褒め言葉にならないね」

「それを持ってる人に言うんじゃないの?」

「持ってるだけでオシャレなの?」

「じゃあ撮った人?」

「それカメラマンじゃん」

「じゃあ違うか」

「いやらしいこと自体がオシャレなのかもよ」

「いやらしいことをオシャレにした人がオシャレなんだと思うけどなぁ」

「ナカメグロはいやらしいことをオシャレにした人なのかな」

「いやらしいことをオシャレにする行程がナカメグロなのかもよ」

「人じゃなくて?」

「そう。行程」

「得てしてそういうもんかもしれないね」

「曖昧だし」

「あ、そうそう。ナカメグロと同じくらい、ダイカンヤマっていうのもオシャレらしいよ」

「ダイカンヤマ?」

「そう。ダイカンヤマ」

「関取みたいでオシャレな感じしないけどなぁ」

「それも服関係?」

「同じ土俵だから、服関係だと思うよ」

「関取の服かな」

「関取の服ってそれ浴衣じゃないの?」

「まわしかもよ」

「オシャレなまわし?」

「どう足掻いてもオシャレにはならないね」

「想像してみたけどね」

「そう考えるとナカメグロも関取の名前に見えてきた」

「じゃあ相撲関係なのは揺るぎないね」

「そうだね。ヌードも入ってるし」

「これからは太っている方がオシャレなのかもしれないよ」

「みんなして太るのかな」

「でも結構太るのも難しいよ」

「何食べたら太るのかな」

「ちゃんこ?」

「それってオシャレじゃないよね」

「じゃあニョッキを食べて太ったらオシャレになるんじゃない?」

「オシャレ太りか」

「でもカロリー高く無さそうだね」

「しなやかに太るとオシャレっぽいよね」

「でもしなやかと太るは結びつかないね」

「健康に、身体を大きくさせるのがたぶんオシャレのポイントだよ」

「じゃあ何?パスタ?」

「パスタかな。アンチョビとかってオシャレじゃない?」

「何が?」

「響きが」

「でもあれって、魚だよね」

「なんだ。やっぱ魚じゃん」







ひとつ校了
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# by gennons | 2005-03-24 20:40 | 妄想

海風

第9回恋文企画参戦
今回のお相手は、のろけブログ「僕は君の太陽だ」で
活躍中の妄想彼氏「だぁ様」です。


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港の似合うあなたが、海を見ている。
あなたの視線が、遠い遠い、果てしなく遠いどこかを見ていて、
その場所が、僕の知らない綺麗な楽園だということを
あなたはその横顔で、僕に伝えた。
楽園なんてそんな大それたものじゃない。
あなたの見ている場所は、遠く離れてしまった小さな幸せ。
当たり前の話だ。
今いる場所からすれば、どこだって楽園に見えてしまうのだから。

あなたとなら、どんなに苦しい茨の道も、素足で歩いていけると思っていた。
針の雨が降っても、あなたは僕をその大きな背中で守ってくれる。
どろどろの道が僕らの道をふさいでいたとしても
僕はあなたの橋になることが出来る。
苦しい道のりを、二人で乗り越えていける。
どこまでも、どこまでも、僕はあなたの側を、離れることはないだろう。

なんて、そんな幻想を抱いていた自分が今、馬鹿馬鹿しいような、懐かしいような、
それでいて少し、寂しいような。

海風が僕と、あなたの間を冷たく通り抜け、
二人の間にあった何かが、風に流されてしまったような気がして僕は
あなたの袖を小さく引っ張ったのだけど、
相変わらずあなたは海の向こうを見つめたままで、そこに、僕なんて、いなくてもいいみたいで。

「普通の幸せって、何だろうな」

唐突にあなたが口を開いた。
僕はその意味が何なのか、すぐにわかったのだけど
普通の幸せなんて僕の普通では無くなっているし、
普通の場所に戻ることが出来るのならば、今すぐにでも戻りたい。
でも、あなたが言う、普通の場所で、僕とあなたが結ばれる筈もなく、
あなたが行こうとしている場所に、僕は飛び込む勇気がないだけで、
決してあなたと離れてしまうことが寂しいのではないと自分に言い聞かせる。

「普通が一番いいって、母が言ってました」

僕は妙に何かを取り繕って言ったのだけど、語尾が少し震えた。

「おれたちは今、暗い闇の中にいる。お前と俺と、二人だけの暗闇だ。
その暗闇を恐いだとか、寂しいだとか、憂鬱だとか思ったことは一度もない」

「それは、僕だってそうさ。でもそれは一人じゃないからで……」

「そうだな。今まで有り難うな」

海風は、相変わらず僕らの間を通り抜け、二人の間に冷たい空気を残していく
僕は臆病なだけだ。
異性という人種に身を預けたり、甘えたり、強がったり、
そういうことが出来ないでいるだけだ。
種類の違う人間を、受け入れる勇気がないだけだ。
彼じゃなくても、本当は良かったのかもしれない。

でも彼は違う。
彼は海が似合うし、数世紀前だったらきっと、名のある海賊であったに違いない。
世界中の海を渡り歩き、沢山の人やものや、出来事に身体でぶつかって、
大きな大きな人間になっていただろう。
今だってそうだ。
あなたは大きな一歩を踏み出そうとしている。
僕には出来ない大きな一歩。
あなたが進む道の邪魔だけはしたくない。
あなたが進みたいというのなら、僕は泥沼の道に架かる橋にだってなれる。
あなたは僕の背中を踏みしめて歩き、
僕は泥沼の中に、隠れて涙を落とす。

「萌っていうんだ」

そう笑うあなたの顔が、とても優しく見えた。

「とても良い名前だね」

海風が、さっきよりも強く吹いて、あなたとの間を広く裂いていくようで、
僕はあなたに寄り添って腕にしがみついた。
あなたは僕を少し強く抱き寄せ、
何も言わず、静かに唇を重ねた。

これが最後の口づけになるのかと思うと、
僕の頬を暖かな涙が流れ、海風がそれを冷たくさせて、
あなたが見る海の向こうを見ようとしたのだけど、
船の光がぼやけているだけで、
僕には何も見ることが出来なかった。



・**☆**・・**☆**・恋文祭り、届けこの想い ・**☆**・・**☆**・

 お題の相手ブログに向ける、恋するフィクション恋文コンテスト。
 そうです、この恋文は、フィクションです!

 揺さぶれ、心。 あしらえ、魂。
 笑いを取るも良し。 感動を呼ぶも良し。

 選考は、お題の相手に決定権を委ねましょう!
 優勝者は、次回のブログ指名ができます!!

 開催期間: 2005年3月19日(土)〜4月10日(日)午前0時
 審査員: 「僕は君の太陽だ!」が首に巻いている「ファー」
 応募方法:次のURLにトラックバックを送る
 http://iamyoursun.exblog.jp/1764098/       
 審査方法: お題ブログの製作担当者からの、返信トラバにて決着!

☆ あくまでも、フィクション恋文という姿勢を崩さないよう、
☆ 参加者の皆さんは気持ちをしっかりと持って、本気にならないように。
☆ エスカレートして、ストーキングに走らないよう、超気をつけて下さい。暴走は厳禁です!!

 ※ 誰でも参加出来るようにこのテンプレを記事の最後にコピペして下さい。

 主催: 笑ッカー本部 恋文企画同盟

・**☆**・・**☆**・・**☆**・・**☆**・・**☆**・・**☆**


いえーい!一番乗りー!
だぁとの過去をうち明けてしまいました。
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# by gennons | 2005-03-19 22:31 | 妄想

アフリカ

景気づけに、明るい話題の記事を上げます。
サーチライト庸子、七歳。
乙女力満開で猛ダッシュ。
苦情一切お断り。


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ららら林檎の皮むき機 持ち手がちいさくてららら

今日も私は働くの。
毎日毎日、蟻さんのように働いて得るものは一体何になるのかしら。
両手一杯にコピーする書類を持って、階段を上る。
これが綺麗なお花だったなら、どんなに幸せでしょう。
でもこれは書類。
どう足掻いても花束にはならない。
えぃっ!と魔法をかけたら、お花に変わるかしら

「えぃっ!」「んなめぅ!」「えぃっ!」

会社の階段で魔法をかけていると、足元に転がるマフィンが目に付いた。
会社の階段で見るマフィンは、どこか日常と離れた感じがして、
私はしばらくその異空間から来たマフィンに見とれて立ちつくしていた。

「マフィンよマフィン、あなたはどうしてここに転がっているの?」

そう尋ねても、マフィンは何も喋らない。
わかってる。わかっているわ。マフィンが喋らないことくらい私にも。
でも喋らないなんて誰が決めたのかしら。
私は今さっきまでここで、魔法をかけていたのよ。
マフィンが喋ったら、この書類だって花束に変わるかもしれないじゃない。
そんな希望を少しくらい持ったっていいじゃない
あなたにどうしてそれを奪う権利があるの?
あなたはいつもそう。私が望むことを、理解してくれようともしない。
マフィンが喋ったら、どうするの?
どうしてくれるの?
そう……そうね。食べるかもしれないわ。
恐怖でマフィンを食べてしまうかもしれない。

ということを考えていると、彼の笑顔が頭に浮かんだ。
マンガやなんかで満月が好きな人の顔にぼやぁっと変わるビジュアルが
私の頭に広がってそして、心を全て、覆い尽くしてしまう。
こうなったら最後、私は仕事どころじゃなくなるの。

「このマフィン……彼に食べてもらいたい……」

この感情は抑えろって言われてももう止まらない。
走り出したら止まらないゼンマイ仕掛けのくるまやさん。
思い立ったら大吉日で、私はそマフィンに手を伸ばす。
そしたら私ったら、手だけを伸ばせば済む話なのに
同時に足まで出しちゃって、
うっかり踏んづけたマフィンはグシャリと音も立てずにぺしゃんこになって、
足を上げてみたらもう粉々で、靴の跡がとても寂しく見えて仕方がない
私はもう奥歯のつま先あたりまで、涙が込み上げていて

「泣きたいのはこっちの方だわ」

と叫んでみたら、誰もいない階段に
「だわぁ……だわぁ……わぁ……ぁ……」と声が響くだけで
だれも何も言わないことがつまらないから泣くのをやめて、粉々になったマフィンを拾い集めたの。
ちょっと形は悪いけど、味は保証する
あなたの為に、一生懸命拾い集めたから。だから。

両手に粉々のマフィンを持っていて、とてもじゃないけど書類なんて持てない。
私はマフィンのかけらをこぼさないようにそぉっと家に持ち帰り、
このままじゃなんだから、ラッピングして、彼のもとへと全力で走るの。
駅までの道を走りながら、
魔法で書類がお花に変わっても、たいして幸せでもないことに気付いたけど
切符を買って電車に乗り込んだときには、
そんなこと、もう思い出せないくらい幸せな気持ちでいっぱいだった。
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# by gennons | 2005-03-15 19:51 | サーチライト庸子

メリー

うそ日記にTBの記事です。

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友人の哲也に彼女ができたというのでひとつ見てやろうと待ち合わせて行った新宿の喫茶店。
奴の彼女は羊だった。
はじめは冗談だと思っていたのだが哲也の目は真剣で、
テーブルの横に佇む羊を見てはでれでれと顔を歪めるのだ。

「どう?メリーっていうんだ。可愛いだろ?」

可愛いだろ?とか言われても相手は羊である。
羊は羊。どこをどう見たら他の羊と区別できるのかも僕には分からなかった。
メリーはテーブルの横で「ブヒュルルル」と鼻息をあげて、その場で足踏みをしている。

「メリーとこないだも原宿でデートしたんだけどさ、
最近の若い娘と違ってブランドものにも興味がなくってさ、何にも欲しがらない。
ただ、野菜や紙なんかをあげると凄く喜んでくれてさ、それがまた可愛いんだよ。なぁ?」

哲也の呼びかけにもメリーは答えず、全く聞いている様子はない。
それどころかメリーは、隣の席に運ばれてきたシーザーサラダに釘付けのようだ。
そしておもむろにそのサラダに顔を寄せ、むしゃむしゃとかぶりついた。

「こらっ、メリー、メリィ!」

哲也はメリーの頭をぽんぽんと叩くと、ポケットから皺皺になったキャベツの葉っぱを取り出し、
彼女に食べさせた。

「どこかに……繋いでおいたほうがいいんじゃないのか?」

また他の客に迷惑をかけかねないので言ったのだが、哲也は僕を訝しげに睨んで溜息をついた。

「まぁ、よく言われるんだけどさ、おれ、彼女を束縛したりしたくないんだよ。
おれとメリーは深い信頼で繋がっているんだから。なぁ、メリー」

メリーは哲也の呼びかけを全く聞いていない。
それどころか他のテーブルに運ばれてくる料理が気になって仕方がないようだ。

「ふふ、照れてやがる。可愛いなぁ」

哲也はメリーが羊であることをどう考えているのだろう。
生命の種類を乗り越えた愛が発生したのか、
もしくは羊であることを気付いていないのか……
いや、僕は何を考えているのだ。
メリーはどこから見ても120%羊だ。
気付かないなんてありえないじゃないか。
しかしアイツの態度からすると……

「お客様……ペットの御入店はちょっと……」

ほら来た。当然だ。ここは飲食店なのだから、羊の入店が許可されるわけがない。
しかし哲也はその注意を素直に受け入れてくれるのだろうか……

「は?何?ペット?どこにいるんだよ。そんなの」

「え?あの……この羊のことなんですが……」

店員はメリーを見ながら言った。

「羊?ペット?馬鹿じゃねーのお前。こいつは俺の彼女なんだよ。
果てしなく失礼な店だな。そりゃあ見た目は普通の女の子から少しずれているけど
だからって、ペットはないんじゃないの?
真剣に付き合ってるし風呂も一緒。結婚して将来子供は三人とかまで今話が進んでるんだよ。
お前、その内情を分かっていってるのか?」

哲也が怒りを抑えきれずにテーブルをドンっと叩き、
メリーが「めぇぇ」と短く鳴いて、フロアにプリプリと脱糞を始めた。

こ……子供……?
哲也は興奮してまくし立てるように店員に詰め寄っていたのだが、
僕は哲也の言葉に驚きを隠せなかった。
恐らく現状で、アイツはメリーが羊であると言うことに、気がついていない。
哲也の異常なまでの剣幕に圧倒された店員は、涙目で謝り、店の奥へと消えた。
僕はまあまあと哲也をなだめ、落ち着いて座るように促した

「お前……メリーと結婚するのか……?」

「そうなんだよ。俺、こいつのこと真剣に好きだし、愛してる。でもまだ両親には言ってないんだよなぁ」

そりゃそうだろう。どこの世界に異種婚姻の承諾をする親がいるのか。

「こいつ、夜も凄いんだぜ。すげえよがって何度も求めて来るんだ」

ひそひそ声でそう話す哲也の顔はにやけていたが、僕は愛想笑いすらできないでいた。

「子供が産まれてもやらしい娘に育つんじゃなあいかって、もう心配で心配で」

それは確実にない。どう足掻いても淫乱な、というか子供は産まれない。
そう言いたかったのだが、僕にその勇気は出なかった。

「む……むこうの両親はなんて言ってるんだ?」

我ながら無理のある質問である。

「あー。俺まだあいつの両親に会ってないんだよ。会う前にまず、職を探さなきゃ」

もはや僕は何を話して良いのか分からず、ただ黙って苦笑いを浮かべるしかなかった。
メリーはそんな僕や哲也の悩みなんて、まるで関係ないかのようにきょろきょろと周りを眺め
「めぇぇ」と鳴いて、その場に座り込んだ。

「ま、親に紹介する前に、やっぱお前に報告しなきゃと思ったわけだ」

「そうか。あ、ありがとう。紹介してくれて」

哲也は店員を呼んでチェックを頼んだ。
メリーが羊であることを、僕は教えなければいけないのだろうか。
いや、そんな義務はないし、ただのお節介にもなりうる。
僕は黙って哲也とメリーを見守っていくことにした。

哲也が席を立つと、メリーも立ち上がる。
レジに向かう足を踏み出したところで、哲也がメリーのウンコを踏んだ。

「うわっ!誰だよ!こんな所でうんこした奴!つーかウンコの落ちてる店ってどうだよ!」

哲也はずりずりと足の裏を床にこすりつけながら会計をすませた。
店を出るともう夕方で、夕焼けに佇む一人の男と一人の羊。
不思議な違和感を胸に哲也が別れ際

「お前も、早く彼女くらい作れよ」

と言った。
僕は半笑いで「幸せにな」と言った。
自分でも不思議だったのだが、その言葉に嘘はない。
障害は多々あるだろうけど、幸せになって欲しかった。

振り返ってみると、タクシーに乗車拒否をされている二人が見えて、
哲也が大きな声を出している。
となりにいるメリーは、まるでそんなこと、自分に関係ないかのように周りをきょろきょろ見渡して
「めぇぇ」と力の抜けるような声で鳴いた。
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# by gennons | 2005-03-10 22:49 | 妄想

ヘヴン

巡回も更新もコメントもしていません。
忙しいからとか言って今まで誤魔化してきましたがあれ嘘です。
本当は無職です。
家でビデオとか見てます。
ブログは飽きつつあります。
こんな気分の日は、ボツネタでもアップして気を紛らすことにします。
カラーさんのオフレポをアップしようとも思いましたが
加藤鷹「秘戯伝授 最終章」を読んで指の修業をしたためタイプができません。
ご了承下さい。


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仕事でヘトヘトになって帰宅すると、玄関のドアに小窓とプレートが付いていた。

“会員制”

なんだこりゃと思って部屋番号を確かめたのだけど、間違いない。僕の家だ。
誰かのいたずらかなと思い鍵を差し込んでみたのだけど鍵は回らず
どうしたことかとドアをガチャガチャやっているとスコンと小窓が開いた

小窓から覗く真っ黒な肌に真っ黒な眼は僕の全身を舐めるように見ている

「だ……誰ですか。人の家で」

「ミブンショウメイショ」

……小窓の男はカタコトの日本語で何か言っている。
僕が「は?」と聞き返すと男は小さく溜息をついて

「ミセイネン、ハイレナイヨ」

と言った。いや、確かにここは自分の家だ。
自分の家に入るのに何故身分を証明しなければならな……というか誰だよこいつ。
僕は苛立って少し考えてから

「ここの家主だけど」

と強い口調で言った。
すると小窓はスコンと閉じて、ガチャリとドアが開いた。
小窓の男は大柄な黒人で、真っ黒なスーツを着ている。
僕が訳も分からないまま玄関に足を踏み入れると、男はにやりと口を緩め

「ウェルカムトゥヘヴン」

と流れるような発音で言った。
玄関には本来あるはずの下駄箱や靴や傘立てなどはなく
ピカピカのタイルが敷き詰められている。
なんだよこれはと呟きながら部屋を見渡したが、
僕の部屋であった痕跡は微塵も感じられない。

天井からはミラーボールがぶら下がっていて、
台所はバーカウンター、奥はステージになっている
ステージからにょっきりとはえた鉄棒に、
金髪のダンサーがきわどい衣装でくるくると踊りながら僕に目線をくれているようだ。

ベッドも、ちゃぶ台も、パソコンも、僕の所持品は一つも見当たらなくて愕然とした。
部屋の奥に進むと、数人の白人がビリヤード台でカクテルを飲みつつ談笑している。
余りにも様変わりしてしまった自分の部屋に僕は混乱し、
六本木より凄いな……なんて馬鹿げた呟きと共にコートを脱ぐと
巨乳美女がコートを預かってくれた。

混乱する以上に疲れていた僕は、ビールでも飲もうと思い台所否、バーカウンターに行くと
彫りの深い平井ケンみたいなバーテンダーが、サムシンドリン?と聞いてきたので
僕はビールといってカウンターの椅子に腰掛けた。
バーテンダーはサーバーから生ビールを注いで僕の前に置き

「ナナヒャクエン」

と言って手を出してくる。
金まで取るのか……
僕は財布から千円札を出して渡し、ビールを一気に流し込んだ。
疲労のせいでビールは回るし、眠気も非道い。
軽快なダンスミュージックと英語の会話。
頭が痛くなってきてどこか眠れる所を探しているとビリヤード台の向こうにソファを発見した。
僕はグラスを持ったままふらふらとそこまで行ってソファで横になり、目を閉じる。
悪い夢でも見ているのだなと思いながら意識は遠くなり、
ダンスミュージックだけが妙に頭に響いていたがソファの感触も気持ちが良かったのでそのまま眠りについた



ダンスミュージックは夢の中でもずっと響いていて、
ハッと眼を覚ますと何故かまだ僕はソファで横になっているし、音楽も鳴りやんでいない。
ビクッとして足元を見ると、昨晩ステージで踊っていた金髪の女がタバコを吹かしていて
女はこちらに視線を向けるとゆっくり僕に覆い被さりそして僕の鼻先をぺろりと舐めてから

「グンモーニン」

とこれまた流れるような発音で小さく囁いた。
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# by gennons | 2005-03-05 15:34 | 妄想

雑草のように

さて、廃墟のようなここ、「今日も足が臭い」もいよいよネタがなくなってきました。
なので村おこし的な発想で、新ジャンルを立ち上げてみました。
気が触れたわけではございません。
べつの所で書いているポエムの詳細記事とでも言いましょうか。
つか、ポエムて。
ちなみにカテゴリ名の「サーチライト庸子」には、何の意味もありません。



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誰にも何も言われず、そこにいることを気付かれないくらいしぜんな人になりたい。
駅のホームでそんなことを考えながら、電車を待っていた。
駅は土曜日だということもあって、沢山の人でごった返していて
私はもうそれだけで吐き気がする。
これだけ人がいれば、誰かが私のことを見ていてもおかしくはないだろうと思うからだ。
自意識過剰?そうかもしれない。
でもそういうことってみんな多からず感じているのだと思う。
誰かも分からない人に見られるなんて、気味が悪いわ。
私の後に並んでいるこの青年だって、何者かわかったものじゃない。
私の後ろ姿を舐めるように見ているかもしれない。
そう考えると急に恐くなって、私は後を振り返ると

「あなた、誰?」

と青年に言った。
青年は不思議そうな目で私のことを見つめ、おどおどしてから

「は?……誰って言われても……」

と困惑するばかりだ。
私は、少しでもその人のことを知ればお互い恐怖も薄れるだろうと思って
声をかけたのに、誰って言われてもですって。
私は幻滅して振り返るのを止め、溜息をついた。
背中に感じる青年の視線。
ほら、やっぱり見ているんだわ。
私のことを舐めるようにずっと。
いやらしい。
あぁ、こんな青臭い男に見られるくらいなら、道ばたの石ころになりたい。
誰も気に留めない、道ばたの石ころとか、雑草とかに。
そうして雑草のような彼氏ができて、
雑草のような恋をして
雑草のような顔色で、雑草のように生きるの。
そんなことを考えている間にも、青年の視線は私の後ろ姿に突き刺さっている。
どうしようもなく腹が立ってきて

「私は雑草になりたいのよ!」

と叫んで男の顔を平手で殴ったの。
青年はキョトンとした顔で叩かれた左頬を押さえている。

「雑草よ。あなたにわかる?」

そう言ってもう一度男の顔を殴る
そしたら今度は、青年はおろか周りの人混みも私を見て、ざわざわして、
手の届く範囲の人人人を順番に殴ってまわっっていると、
私の右手は汚らしいオヤジに掴まれて動けなくなった。
どうしてなのかわからないのだけどその時、私の頭の中には雑草の歌(作詞・作曲:私)
が流れてきて、それをラララと口ずさんでいたらいよいよ駅員までもがやって来て
私の腕を掴んで変な個室に連れて行かれたの。

私は座り心地の悪いパイプ椅子に着席させられて
何か色々言われたり聞かれたりしたのだけど、
私の頭の中には雑草の歌が流れていてそれどころじゃなかったし、
私はそもそも雑草だから喋ることも聞くこともできない。
私は雑草。
何も喋らないことを誓ってだんまり。
何か聞かれたら

「私は雑草」

とだけ答えて、雑草の歌を口ずさんでいたらだんだん気分がドロドロになってきて
水の中にいてるみたいにふわふわとして気持ちがいい。
もういっそ、お魚の卵になりたい。
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# by gennons | 2005-03-01 07:14 | サーチライト庸子